野沢菜に関する研究
ストレスや食生活の乱れ、肥満などの要因により免疫機能が低下すると、感染症やアレルギーなどの様々な免疫関連疾患を引き起こします。
免疫機能を維持・向上させるためには、免疫を調節する食材を摂取することが大切です。
食による免疫調節機能
野沢菜はアブラナ科アブラナ属の植物で、信州伝統野菜の一つです。長野県野沢温泉村を中心とした信越地方で栽培されています。成長した地上部は10~11月に収穫され、野沢菜漬けとして主に食されます。食物繊維やビタミンCが多く含まれていることが野沢菜の特徴です。
我々の研究室では、免疫調節機能の高い食材の探索を行いました。特に、免疫賦活効果をもつ野菜についてスクリーニングを行ったところ、「野沢菜」に高い活性があることを見出しました。
信州伝統野菜「野沢菜」
野沢菜の免疫賦活効果のメカニズム
野沢菜抽出物はToll-like receptor(TLR)2とTLR4を介して樹状細胞を活性化させ、IL-12と呼ばれるサイトカインの産生を誘導します。このIL-12はナチュラルキラー(NK)細胞に作用し、NK細胞が活性化してIFN-γ産生を誘導します。また、野沢菜を摂取させたマウスでは、NK細胞の細胞傷害活性であるNK活性の増加が確認され、免疫賦活効果があることが示されました。したがって、野沢菜の摂取により、感染症予防効果が期待されます。
野沢菜の醗酵に伴う変化
野沢菜を塩漬けで醗酵させたところ、乳酸菌数が増加し、それに伴い免疫賦活効果も高まりました。また、野沢菜漬け由来乳酸菌を単離培養し、菌種同定したところ、Lactobacillus plantarumやL. curvatusなどの乳酸菌であることが確認されました。これらの乳酸菌種が野沢菜漬けの醗酵に伴う免疫賦活の増加に関与することが明らかにされました。
野沢菜によるマクロファージの活性化
野沢菜のマクロファージに対する効果を検証したところ、野沢菜の活性成分はマクロファージの活性化を引き起こし、細胞表面抗原の発現を増加させました。また、異物の排除に重要な貪食能を増強させました。さらに、野沢菜はTLR2とTLR4を介して、マクロファージからのサイトカイン産生とNO産生を誘導しました。以上より、野沢菜はマクロファージの活性化を介して、自然免疫を賦活化させることが示されました。